お客さんという意識からクライアントという意識へ

日本では、『お客様は神様です』という意識が根強くあり、それは日本の接客水準の高さとなって現れたり、必要以上の上下関係を作る形で現れたりと、賛否意見が分かれるところです。

一方で、私たち経営者が、お客さんをどうとらえるか?このこと次第でビジネスの生み出す効果が天と地ほど変わってくるといっても過言ではないでしょう。あなたが適切な視点でお客さんを意味づけることができたら、あなたが生み出すビジネスの価値は、とてつもなく魅力的なものとなるでしょう。

 

顧客至上主義と殿様商売

お客さんの捉え方を示す妙例を体験したので、まずはそのことを。

私は会社で人事職をして10数年です。最近自分の部署に、営業部門出身の若手社員が私の働く人事部門に異動してきました。そして、一緒に人事の仕事をしていく中で、彼が言ったのです。

 

『自分は営業出身なので、どうしても相手(相談やクレームをもってくる従業員)が正しいと思ってしまいます。相手の言うことをかなえてあげないと思ってしまう。しかし、松崎さんの仕事の仕方を見ていると、時に人事部として相手を正したり、諭したりできるようにならなければと思います。これがなかなか大きなギャップだと感じて面食らっています。』

 

正直、大変聡明な視点だと思いました。営業部門はお客様は神様、という視点があると思います(古いかもしれませんが、少なくともその後輩は言います)。だから、基本は相手が言ってくることは正しい前提で、そのことを叶えてあげることが大切。

反対に、人事部門が相手にするのは従業員、お客さんというよりは、良くも悪くも家族に近い意識です。なので、時にお客さんのように要望に応じる存在であると共に、要望を断ることもありますし、更には相手を正すこともあります。規則の番人として懲戒と言うように相手を罰することも仕事の一つです。

だからこそ、人事部門は時に厳しくあらねばならないため、バランス感覚が必要とされます。

余談ですが、それがゆえに、一部で、自分が偉いと勘違いしてしまう人事屋が、殿様商売のように立場に胡坐をかいてしまうことがあるのも事実です。これは恥ずべきことでしょう。人事屋はあくまで従業員のために存在するもので、少なくとも従業員の上に立つという位置づけではありません。

そうした意味で、営業部門と人事部門は接する主たる相手に対し、『お客様は神様』と『殿様的(勘違いですが)』といった、一見相反する位置づけとして捉えています。

しかしながら、両方とも『相手の問題を解決する』という点は共通するのです。

 

顧客ではなくクライアントという捉え方

私は、顧客と売り手にどちらが上でどちらが下と言うことはないと考えています。公平かどうかは知りませんが、少なくとも対等です。

売り手がお客さんを神様と捉えてしまうと、場合によっては、お客さんの言いなりとなってしまいます。反対に、売り手が殿様商売で、お客さんのウォンツを満たすことなく振舞えば、長期的な商売にはならないでしょう。だから、営業的な視点と、人事的な視点は両方とも大事というのが、私の考えです。

両者に共通するのは、『相手の困りごとを解決する』ということ。ただし、大切なのは、ここでいう困りごとと言うのは、『本当の困りごと』ということです。

しばしば、お客さんは自分の本当の困りごとに気づいていません。うわべだけで商品やサービスを求めてしまうことがあります。ここに対して、お客さんの考えを上手に聞き出し、誘う(いざなう)ことで、本当のウォンツに導くことが、私たち売り手の大切な役割です。

ある意味でそれは、我々人事が従業員の方の悩みをよく聞いて、うわべの訴えを却下して、本質的な解決となるための提案をすることに似ています。そしてそれが成功するためには、従業員の方に対して、心の底からサポートするための存在であることが必要不可欠です。時に営業マンであり、時にコーチであり、時に教師であり、アドバイザーになる必要があります。

だからこそ、私たちはお客さんを、顧客ではなくクライアントという風にとらえる必要があります。イエスマンで神様扱いするのではなく、相手が配下であるかのように押し付けるのではなく、本当に相手のためを思い、クライアントとして接することが、本当の意味でのお客さんの困りごとの解決となり、最高のサービスを生み出すことに繋がるでしょう。

というような話を、後輩にしました(笑)

 

まとめ_顧客ではなくクライアントとして接する

 

お客さんを、『お客様は神様です!』という風に接すると、お客さんの真の困りごとの解決から遠ざかる場合があります。反対に、お客さんを配下であるかのように、殿様商売をしていたら、そんな商売は続かないでしょう。

大切なのは、顧客ではなくクライアントと相手を捉えて、相手の本当に求めるウォンツを解決できるように、対等の立場でコミュニケーションを取り、相手から引き出し、導くことです。

 

お客さんを真に大切な存在として捉えるからこそ、対等に接することが重要ですね(^_-)-☆